「麦」と「麦芽」の違いってナニ?
麦はとにかく芽を出したいのです。
その芽を伸ばして、土から栄養を吸収し、日光で光合成をして、いずれは自分も種子を残したいという壮大な夢があります。
そのためにはとにかく発芽して酵素を発生させ、胚乳のデンプンを糖に変えなければなりません。
麦と麦芽の違いはここです!
芽が出ているかどうかです。
そのままですね。
英語では、普通の大麦はバーレイ、麦芽はモルトと呼びます。
もちろんですが、発芽していない大麦や小麦しかないと発酵しません。
芽が出ている→酵素が発生している→デンプンが糖に分解されている→発酵できるなので、
芽が出ていない→酵素が発生していない→糖化できない→発酵できない からです。
麦芽にせずに使用しているビールもある?
ラベルの裏面を見ると、「大麦麦芽、大麦、小麦」などと精麦(芽を出させること)をしていない麦が使われているものが見られます。
そのままでは発酵しないのになぜでしょうか??
税金対策から生まれた今なお愛される超傑作
ひとつは税金対策です。
アイルランドではビールから酒税を取るときは、主原料中の麦芽の割合によっていくら税金がかかるか決まっていました。
日本でもそうですよね。
ビールと発泡酒、新ジャンルを分けるのは 麦芽の使用比率です。
アイルランドでも、イギリス由来の麦芽たっぷりビールを自国で作ってみたいけれど、税金が高過ぎる問題がありました。
そこで、アーサー・ギネスは閃きました。
「ちょっと麦芽を減らす代わりに、そのままの麦とホップをいっぱい入れたらええやん!」と。
こうして、世界的に大ヒットするギネス・スタウトは生まれたのです!
麦芽にして糖化するのが必ずしも良いわけではない
もうひとつは、コクが出ることですね。
デンプンがぜーんぶ糖になって、その糖もぜーんぶアルコール発酵してしまったら、かなりドライでクリアなビールができあがります。(ぜーんぶっていうのは比喩です。実際にはあり得ません)
発芽していないということは、デンプン質やその他の成分もそのまま残っているので、ボディ(飲み込んだときの重み)がでます。色も濁ります。
ベルギーでは、ホワイトエールやランビックなど、麦芽にしていない生の小麦をあえて使っているスタイルがいくつかあります。
ビールに使われる麦の種類
大麦
ビールに使われるのはほとんど大麦です。
最も安定して糖化・発酵させることができます。
まさにビールのためにあるような穀物です!
ビールに使うのは穂が2列に並んだ二条大麦がメジャーです。
6列に並んだ六条大麦を使うこともありますが、六条大麦は麦茶や麦味噌などの方がよく使われています。
小麦
大麦の次によく使われています。
ヴァイツェンやホワイトエール、ランビックなどが代表例ですね。
大麦と比べるとタンパク質が豊富なので、コクが出ることと白く濁ることが特徴です。
上記の3スタイルでは、精麦していない小麦も使われています。
ライ麦
ライ麦は劣悪な環境でも育つので、小麦が育たない土地の栄養源として食されてきました。
和名は「黒麦」です。
ライ麦で作ったビールは「ロッゲン」と呼ばれ、アメリカで作られてきました。
最近では、ヤッホーブルーイングの「僕ビール、君ビール。」シリーズから、ライ麦を使った「流星レイディオ」が発売され、人気を集めました!
エン麦(オート麦)
エン麦(えんばく)は、オート麦やオーツ麦とも呼ばれます。
オートミールや、家畜の飼料などに使われています。
エン麦に特徴的なまろやかさ、コクが出るので、伝統的にビールに使われてきました。
オートミールスタウトなどが有名ですね!
今 大流行のスタイル「ニューイングランドIPA」、通称「ヘイジーIPA」はこのエン麦を使っています!
これで、ビールの身体を作る「麦」のことがよくわかってもらえたかと思います!次は、「ビールの魂」でおなじみの「ホップ」を紹介していきます!