酷暑が続きますね!
キンキンに冷えたビールを、ごくごくぷは〜っとしたい衝動に駆られます。
さてさて、今までこのブログに何度もその名が登場しておきながら、詳しく解説されてこなかったスタイルがあります。
それは、『ピルスナー』です!!
今回は、満を辞してピルスナーの、またそれに付随する諸スタイルのご紹介をしたいと思います!
これを読めば、スーパーやコンビニで買える大手メーカーのビールがさらにおいしく感じられるはず!!
早速、ピルスナーが生まれた背景から見ていきましょう!
1842年11月、その時歴史が動いた
今でこそ、世界中で飲まれているビールの約7割はピルスナーですが、実はピルスナーは300年ほど前にチェコで誕生したばかりで、それ以前の2000年余り、人類が飲み続けてきたのは、エールビールだったんです!!
それでは、300年前に何があったのか。きっかけはヨーゼフ・グロールというダメ男でした。
彼は腕のいい雇われ醸造家だったんですが、とにかく酒癖が悪くて迷惑をかけまくるので、長く同じブルワリーに留まることはなかったんですね。
彼がピルゼンの市民醸造所に招聘されてビールを仕込んだ際のこと。
これまでのビール同様、暗い色合いで濁ったビールができるはずでした。
しかし……
という数々の偶然が重なって、黄金色に輝くクリアなビール『ピルスナー』が生まれたのです!!
当時のピルゼンの人々が驚き感動したのは想像に難くありません。
ただグロルはあまりにもダメな奴だったようで、ピルゼン市は「ラガービールが生まれたのは、この街の軟水のおかげであって、グロルの功績ではない!」と主張、その後グロルは追放されてるんですよね。。
どんなに腕がよくても、酔っ払って人に迷惑をかけてはいけないという教訓です。
ピルスナーは瞬く間に大人気となり、世界各国で作られ、今日に至っています!
Eはいるんか、いらんのか
以前、開拓使麦酒の記事で
「PILSNER」なら本場チェコのピルスナービール、「PILSENER」とE入りならピルゼン以外で作られたピルスナービールを指します。
とご紹介しました!
この背景を詳しく見ていきましょう!
ヨーゼフ・グロルが使った新しい酵母というのは、ドイツのミュンヘンから持ち込んだものです。
当時、常温で発酵させるエールビールは雑菌繁殖の問題が深刻だったため、菌の繁殖しない低温で長期間熟成させる“ラガー”という製法が注目されていました。
ミュンヘンとしては、グロルを通してラガービールを“教えてあげた”という認識でしたから、ミュンヘンでもピルスナーを“本家”として作りはじめました。
もちろんチェコのピルゼンは猛反発。
1898年と1912年に、“ピルスナーをピルゼン以外で作るのは違法だ”と裁判を起こしています。
結果「ピルスナーは一般名詞化しているので強制できないが、ピルゼン生まれのものと区別できるようにすべし」と判決が下されました。
だから、ピルゼンの元祖ピルスナーは「PILSNER」
ピルゼン以外のものは「PILSENER」もしくは「PILS」と呼ばれているんです!
Eのひと文字にこんな歴史があるなんて、これだけで一杯のあてになりますね。
ピルスナーの特徴
大多数の人が、「ビール」と聞いて思い浮かべるもの!!
それがピルスナーの特徴です!
黄金に輝く澄んだ液体に、白い泡。強めの炭酸、爽やかな喉越し。
この時期、炎天下の中にいるとどうしようもなく欲してしまう、あの奇跡の液体です!!
もうお分かりの通り、キリン『一番搾り』も、サッポロ『黒ラベル』もピルスナーです!
おすすめのグラス
ピルスナーグラスという、脚つきで細長いグラスがあります。
ピルスナーグラスを公式グラスに設定している銘柄は多いです!
しかし私いむらの個人的おすすめは、ベルギービールウィークエンドでもらえるグラスを使うこと!!
このグラスは、口径1に対して高さが1.8〜2.2、円筒形であり且つ底が丸くて対流する、適度に炭酸を抜いた方が良いピルスナーにとっては超絶理想のグラスと言えます!!
私が自宅でピルスナーを飲むときは、ほぼこのグラスを使っています!
ピルスナーの分類と代表銘柄
ボヘミアン・ピルスナー
ピルスナー発祥の地、チェコのピルスナーです。
本場of本場!!
ジャーマン・ピルスナーと比べると、麦芽のコクが強いのが特徴です!
色味も濃いですね。チェコは良質な麦の産地だということが影響しているようです!
代表銘柄:ピルスナー・ウルケル
ピルスナー・ウルケルなくして、ピルスナーは語れないでしょう!!!
ヨーゼフ・グロルが世界で初めてピルスナーを醸した地、ピルゼンの市民醸造所が、今のピルスナー・ウルケルです。
ピルスナー・ウルケルは当時のレシピを忠実に守っているそうですよ。これぞ元祖ですね!!
ピルスナー・ウルケルには、現地で修行しウルケルの注ぎ方などを極めた“タップスター”と呼ばれる人達がいます。
そのうちのお一人と最後に話したとき、「日本には自分含めて4人しかいない」とおっしゃっていました!(2、3年前なので、今はもう少し増えているかも……?)
皆さんもウルケルタップスターのいるお店を探して、プロの注ぐピルスナー・ウルケルを飲んでみてはいかがでしょうか?
ジャーマン・ピルスナー
ボヘミアンピルスナーと比べると、色合いは淡く、ホップの苦味が強いのが特徴です!
特に北ドイツのものは航海を見越していたので、防腐剤としてのホップを多めに使っていますね。
南へ行くほどモルティになってくるのもおもしろいです!
代表銘柄:ヴァルシュタイナー
「ラガーの女王」の異名をもつこのヴァルシュタイナー、特筆すべきは“水の硬度の低さ”です!
世界的な名水と評されているカイザー・クベッレ泉の天然水を使っていて、その天然水が“超軟水”なため、さらさらと水のように飲めるビールに仕上がっています。
300年近い老舗でありながら、現在でもシェアトップクラスを誇っているのが納得の銘ビールです!
鬼滅の刃のキャラをビールで例えてみたの記事で、私の最推しキャラである水柱・冨岡義勇さんのイメージビールとして登場したのが、このヴァルシュタイナーです!!
インターナショナル・ピルスナー
チェコとドイツ以外で作られたピルスナーです!!
オランダの『ハイネケン』やデンマークの『カールスバーグ』などですね。『黒ラベル』も『一番搾り』もここです!
ただし、アサヒ『スーパードライ』は麦芽率が低く、麦汁濃度も低いため、コンペなどではピルスナーではなく“ライトラガー”として出品されているようです!
このあたりの境い目は曖昧ですね。『バドワイザー』もアメリカンライトラガーと言われています。
またサッポロの『ヱビスビール』は、麦汁濃度が高くホップの苦味も効いているため、ピルスナーではなく“ドルトムント”という別のスタイルに分類されます!
ピルスナーと間違われやすいスタイル“ヘレス”
ミュンヘンでは、もともと濃色のラガービールを作っていましたが、ピルスナーの爆発的な人気を受けて「うちでも淡色のラガーを作ろう!」となり、誕生したのが“ミュンヒナー・ヘレス”です!
「ヘル」とか「ヘレス」には、「淡い」という意味があります。
パンを思わせるほど麦の香ばしさを感じるビールです。ジャーマンピルスナーとの違いはここです!
ピルスナーはあくまでもホッピーであるのに対し、ヘレスはモルトが主役です。
本家オクトーバーフェストに出店される6大醸造所の作る、淡い色合いのラガーはピルスナーではなくヘレスということです!
代表銘柄:レーベンブロイ
私のビール観において、基準となるビールです。
モルトとホップ、飲みやすさとコク、甘味と苦味……全てにおいてバランスが取れています!
実は、まだビールの伝え手として駆け出しの頃、レーベンブロイをメインタップとするドイツビール専門店にいたんです!
注ぐ技術もグラスとの相性もケグの管理の仕方も、全てレーベンブロイに教えてもらいました。
だから、私にとっては魂の伴侶のような存在です。
アサヒがABインベブと提携を解消したため、日本でレーベンブロイの樽生を飲める機会はがくっと減ってしまいました。。
今年はもう厳しいかもしれませんが、来年こそ日本でもオクトーバーフェストが開催されることを期待しましょう!!!
棚に並んでる多くのビールが「ピルスナー」!
ピルスナーについて、その歴史から派生スタイルまで見ていきました。
どうですか?ちょっとコンビニに行って、どれだけピルスナーが並んでいるか確認したくなりませんでしたか??笑
猛暑はまだまだ続きそうです。
熱中症に気をつけながら、仕事終わりの一杯を楽しみに頑張りましょう!!