もうすぐ年末年始ですね!
今年は密を避けながら神社仏閣にお詣りされる方が多くなるかと思います。
初詣といえば。神社にいる神主さんや、お寺のお坊さんは禁欲的なイメージがありませんか?
お酒とか色恋とか、俗世の欲からは隔離されているような。
しかし!!
キリスト教の中には、修道院内でビールを作っているところがあるんです!
お寺の中でお酒を作っているなんて、日本では想像つかないですよね。
今回は、修道院で作られる“トラピストビール”をご紹介します!
「トラピストビールってどんなの?」「なぜトラピストビールはおいしい?」「どんな銘柄がるの?」といった点から見ていきましょう!
トラピストビールってどんなスタイル?
キリスト教にとって、“ワイン=キリストの血”“パン=キリストの肉”と考えられています。
だから、パンを食べワインを飲むことは、彼らにとって「聖体拝領」という神聖な儀式なんです。
そして、ビールは“液体のパン”です!つまりビールを飲むことも、彼らにとって重要な儀式なんです!
というのは、建て前(とか言ったら怒られそうですけれど)。
実際は、西ヨーロッパを支配したカール大帝による政策だったんです!
当時、粗暴で酒豪なゲルマン民族と上品なローマ民族には溝がありました。
また西ヨーロッパには、葡萄が採れるところと採れないところ、麦が穫れるところと穫れないところがありました。
そういった広範囲な異民族たちを統治するためにはどうしたら良いか?
異民族を統治するには?
・宗教を統一する
・貨幣の流通がない場所でもきちんと税を払わせる
そのために、大帝は各地に教会を作って、全民族をキリスト教に統一し、税として払われた麦をビールに加工したわけです!
ついでに断食中の栄養源となるワイン&ビールを作り、醸造技師を雇うことで雇用も生み出していました。賢いですね!
なぜトラピストビールはおいしい?
トラピストビールのレシピは一般の醸造所に渡りましたが、それらはトラピストを名乗ることが許されず、アビィビールと呼ばれます。
トラピストを名乗れるものは
トラピストを名乗る条件
・修道院内で醸造している
・香味や製造量などの最終決定権は修道士がもっている
・収益は修道院経営と慈善活動のみに使われる
以上の3つの条件を満たしていなければなりません。
つまり、一般企業と違って、利益を求めていないのです!
普通の企業は、業績がよくなければ潰れてしまいます。だから、1にも2にもとにかく売れること、支出を減らして収入を上げることが大切です。
しかし、トラピストビールは、宗教活動の副産物でしかありません。
売れるために、市民の流行に合わせたり、原材料をケチることもない。
修道士が断食中に栄養を摂れるように、本当に栄養価が高く造られています。だからおいしいんです!
トラピストの銘柄
現在、トラピストを名乗れるのは12銘柄あります(2020年12月現在)。
それぞれ簡単にご紹介します!
オルヴァル
オルヴァル修道院はベルギー南部にあります。
修道院にある泉には“女性が泉に結婚指輪を落として悲しんでいたところ、鱒が指輪を咥えて返した”
という伝説が残っています。だから、オルヴァルのラベルには鱒と指輪が描かれているんです!
ビールは「ドライホッピング」という、ホップをたくさん使う製法で醸造していて、豊かなホップの香りと独特な苦味が楽しめます。
トラピストビールは麦芽由来の甘味が強いものが多いですが、オルヴァルはアルコール度数が低め(6.2%)ということもあって、比較的ドライで飲みやすいビールです。
バランスの良さの中にも伝統を感じる銘ビールです。
ロシュフォール
サン・レミ修道院で作られているビールです。
厳しい戒律で知られるシトー派の中でも、特に厳格な生活をしているそうです。
ビールも少量しか生産していません!
ロシュフォールには6・8・10がありそれぞれアルコール度数が7.5%・9.2%・11.3%と高くなっていきます。
アルコール度数が高くなるにつれて色が濃くなり、飲み口の重みも増します。
コーヒーのような苦味、果物のような甘味も感じられます。
個人的にはロシュフォール10がおいしくておすすめです!
シメイ
トラピストビールの中でもトップクラスの生産量を誇るビールです。
目にされたことがある方も多いのではないでしょうか?
シメイにはレッド、ホワイト、ブルーの定番のほかに、修道士が飲むためのゴールドと、ヴィンテージもたくさんあります!
定番ビールをアルコール度数とともに簡単に紹介します。
レッド(7.0%):シメイの元祖。コクと飲みやすさのバランスが良し!カシスの香りのする赤みがかったビール
ホワイト(8.0%):大量のホップが使われているので、レッド・ブルーに比べると苦味が強くキレがあります!透明感のあるビール
ブルー(9.0%):濃厚!濃醇!うまい!!深いコクの詰まった焦茶色のビール
ブルーと、ヴィンテージボトルのグランリザーブは、製造年が記載されています。
酵母も入っているので、数年寝かせて熟成させることが可能です。
4年ほど寝かせて、自分だけの特別なビールに仕上げてからいただくのもまた格別です!
アヘル
数少ないトラピストの中でも、比較的新しい醸造所です。
ベルギーとオランダの国境にあり、何度も戦禍などでビールの醸造が途絶えてしまいましたが、幾人もの手によってその度によみがえってきました。
現在アヘルにはブロンドとブラウンがあります。
ブロンドは、トラピストには珍しいホップ由来の柑橘の香りがあります。
爽やかに、でもしっかりと旨みと喉ごしを感じる淡い色のビールです!
ブラウンは赤みがかった褐色で、「これぞトラピスト!」と言うべきビールです。
完熟したフルーツ感や麦の甘味が強くあり、最後にアルコール感が全体をまとめています!
ウェストマール
ウェストマールも由緒正しいトラピストビールですね。
他の修道院同様、何度もビール醸造を中断されながらも、その度に復興してきました。
最初は自家用のみの製造でしたが、門の前で少量で販売を始めたところ大変人気となり、醸造設備を増築し、シメイと並ぶ現在の生産量へと至っています。
ウェストマールにはダブルとトリペル(トリプル)があります。
簡単にご紹介します!
ダブル
普通のビールよりもアルコール度数が高いのでダブルと呼ばれます(7.0%、純粋に2倍ではない)。
赤みがかった濃いダークブラウンで、モルトの香りと甘味が強いビールです。
しっかりとした飲みごたえがあるのに飲みやすいと世界中のビール愛好家たちから高い評価を受けています!
私も瓶でも大好きなのですが、初めてウェストマール・ダブルの樽生を飲んだときは、おいしすぎてほっぺたが落っこちるかと思いました。。
トリペル
ダブルよりもさらにアルコール度数が高いのでトリペルと呼ばれます(9.5%、純粋に3倍ではない)。
トラピストでは珍しく、かなりクリアな淡色です。
「高アルコールでかつ淡色のビール」の元祖で、ベルギービールによく見られるトリぺルのもととなっています。
ワールド・ビア・チャンピオンシップ2004で金賞を受賞するなど、名実ともに卓越したビールです!
ウェストフレテレン
「幻のトラピストビール」と呼ばれています。
自家用のみの醸造で、一般流通はしていません。
ウェストフレテレン飲みたさに、世界中からビール愛好家が押し寄せるそうです。
このご時世、そうも希少なものだと、当然“転売問題”が浮上します。
二次転売などもあり、相当高額になっているものもありました。
事態を重く受け止めた醸造もとのシント・シクステュス修道院は、オンラインで販売予約を受け付け始めましたが、郵送はなし。
現地で受け取るしかないので、日本から購入するのは依然難しいですね。
一度だけ、醸造所の改修のために瓶ビールを販売したことがあります。
私は偶然その時に飲めました!
コーヒーやモカチョコレートを思わせるフレーバーで、おいしかったのを覚えています。
ブレた荒い写真しか残っていないのが残念です。。いつか現地に行って樽生を飲んでみたいですね!!
ラ・トラップ
つい最近まではオランダで唯一のトラピストビールでした。
ビール作りの最初期の醸造技師は、ミュンヘンで醸造技術を学んだそうです。
そのため、トラピストビールとしてはかなり珍しいことに、一番最初に作られたのはラガービールだったそうです!
現在、トラピストマークのついているクアドルペルとブロンドはエールビールです。
特にクアドルペルは、クアドルペル(トリペルよりも上、4倍の)を名乗った最初のビールとして有名です。
少しだけ感じる酸味が、強い甘味と苦味を引き締めていて、飲み飽きない仕上がりとなっています!
エンゲルスツェル
オーストリアで唯一のトラピストビールです。
「べノー」「グレゴリウス」「ニヴァード」の3銘柄があります。一時は日本でも流通していましたが、現在日本では入手困難となっています。
その他のトラピストビール
ズンデルト(オランダ)
スペンサー(アメリカ)
トレフォンターネ(イタリア)
こちら3銘柄は、2013年以降にトラピストに追加された新しいトラピストビールです。
残念ながら、現在日本では入手困難となっています。
以上、大変長くなりましたが、トラピストビールについてざっくりとお伝えしてきました。
身も心も温まるビールたちで、飲めば崇高な気持ちになれるかも??
どちらかというと冬におすすめですので、ぜひトラピストビールを飲んで寒い冬を乗り越えましょう!!